鍋あり谷あり

テーマを決めずに適当に書いています。

優しい運転手

先日。
バスを待ってた。乗りたいバスは二種類。ひとつは目的地まで10分というところまでしか行かないが、本数が多い。こちらを当たりと呼ぼう。もう一つは目的地まで行くが、たまにしか来ない。こちらを大当たりと呼ぼう。そして、待っているバス停に来るバスの大半は、当たりでも大当たりでもないバスである。これをハズレと呼ぼう。
バスが二台いっぺんに来た。一台目は当たり。乗ってもいい。しかし、二台目が大当たりならそちらに乗りたい。二台目がハズレなら、一台目に乗る必要がある。
というわけで、目を凝らして二台目を見ていたら、二台目の行き先がわかる前に一台目は黙って通過してしまった。
乗りたいかもしれないバスが通過してしまったことに愕然としていると、二台目も通過しようとした。
二台目はなんと、一台目と同じ行き先の、当たりであった。
で。乗ったんだが、客は私一人。直前のバスと行き先が同じで時間が一分も違わないし、混んでいる時間帯でもなかったので当たり前といえば当たり前である。
途中のバス停でも、待っている客は全て前のバスに吸い込まれ、私の乗っているバスは、ずっと私一人であった。

なんて話を書こうと思ったんではなく。

慣れない路線だったので、私はバスに乗る時に運転手に確認した。

私「○○まで10分ぐらいのところに行きますよね」
運転手「はい」

手元の地図によれば、終点で降りればよさそうなので、私はぼんやりと乗っていた。
終点まであとひと駅のところで、運転手が突然声をかけてきた。

運転手「○○へ行くんならここで降りた方がいいですよ。」
私「え? そうなんですか?」
運転手「そこの道、斜めに入れば、あとはまっすぐ行けば○○だから。終点で降りるより近いよ。」
私「あ、そうなんですか。ありがとうございます。降ります降ります。」

なんて親切な運転手なんだろう、と思いつつ下車。
バスを降り、鞄から地図を出し、運転手の説明を確認する。なるほどまっすぐ行けば○○に着く。知らなかった。
なんて思いつつ、地図を見ながら歩いていると、先程降りたばかりのバスが、私の真横で停車した。
バス停でもないのに昇降口が開くと、なかから運転手の声が。

運転手「そこのクリーニング屋のところだから。」
私「え、ああ、ありがとうございます。わかりました。」

私が地図を見ていたので、迷っていると思ったようだ。なんて親切な運転手なんだろう。

と思った。