鍋あり谷あり

テーマを決めずに適当に書いています。

混血と謎の謎

d:id:umeten:20060205:p1 を読んで。
half blood と混血とは意味が違う。例えば、クオーターはハーフではないが混血である。
ということで、直訳しても「混血のプリンス」にはならない。「片親が異なるプリンス」辺りが妥当だろうか。


というのは余談で。


そもそも、教育的配慮や政治的に正しいという理由ではなく、経済的理由(つまり「混血の―」よりも「謎の―」方が売れそうだ、という配慮)である可能性もある。私はその可能性が高いと思っている。もしそうであれば、差別ともポリティカルコレクトネスとも無縁の話である*1


ということも余談で。


すでに読了している身としては:

すなわち、「混血」を「謎」と言い換えることに対する政治的な差別意識の存在である。
(中略)
かのプリンスが話の鍵となる登場人物だからこそ、『謎の』と訳されたのはわかる。
だが、鍵を握る事物や人物に対して、そう言い換えていいのだとしたら、これまでのタイトルがすべて「謎の石」「謎の部屋」「謎の囚人」「謎のゴブレット」「謎の騎士団」となっていてもいいのではないか。

かのプリンスは、ただ鍵となっただけではなく、物語の中で「謎の」と呼ばれるにふさわしい位置にいたから「謎の」という語が選ばれたに違いないと断言できる。
私には、half blood prince よりも mysterious prince の方がより適切なタイトルであるようにすら思える。

読めばわかると思うんだが、賢者の石は決して謎の石などではなかったし、ましてや謎の囚人でも謎のゴブレットでも謎の騎士団でもなかった(秘密の部屋は謎の部屋といってもよかったかもしれないとは思うが、謎よりも秘密の方がふさわしいと思える。一方プリンスは秘密でも何でもないが、謎であった。つまり、秘密の部屋は誰かが隠した部屋だったわけだが、プリンスは誰かがその正体を隠していたわけではない)。

内容紹介を見ても

「謎のプリンス」とは誰か

とあるが、「炎のゴブレットとはどんなゴブレットなのか」とか「アズカバンの囚人とは何者なのか」などとは書かれていない。

というわけで、「混血の」を避けたのはポリティカルコレクトネスであった可能性を否定できない(肯定もできない)が、「謎の」という語が選ばれた理由は「そのような物語だったから」で間違いなく

仮に原題が「Pure-blood」または「Full-blood」であった

としても「聖なるプリンス」などと訳されていた可能性は全くない。読んだ人ならわかると思うが、プリンスはちっとも「聖なる」などと呼ばれるべき存在ではなかった。

#とはいえ。
#私自身は、原題が Half Blood なんだから「混血のプリンス」の方がいいと思っている。

*1:賢者の石のアメリカ版がソーサラーの石になっているのはそのような配慮によるものだと思う